テレビ小説『花子とアン』(12)
私の寄宿舎生活は初めから終わる迄の2年間、何時も一人だけドタバタしていた様な気がする。
または、困りはてて血相を変えているか、いずれにせよ要領が良くなる事も進歩もなかった。
その証拠に学校の成績は落ちるところ迄落ちていた。
後は上がるしかないのだが日曜日の午後の自由時間や隙間時間を、勉強に当てるのは勿体なかった 。毎週ほとんどの寄宿生が帰省して、1人で何もしないで、だらし無くゴロゴロ部屋で過ごす事が 出来た。
こんな状態を私が辞める筈がなかった。
テレビ小説『花子とアン』の花子と私が大きく違う点の一つだった。
相変わらず英語だけは未練タラタラで単語だけ辞書をひいてぶっつけ本番で授業を受けていた。
2年生になって新学期を迎えたら一緒に寄宿舎に入った同級生の6人中3人が寄宿舎を出て通学を 始めた。
特別親しくはなかったが寄宿舎の中では外部からの進学者だったので、初めての経験を共有した彼 女たちが居なくなるのは、6人の固まりで存在していたのが崩れた様で残念な思いがあった。
2年生になって何故か、普通黒板に向かって平行に机が並べられるのが、縦に机を合わせて向かい
合って不自然に黒板に向く事になった。
前の席に、私が顔をあげて目が合うと、優しげな目で口元をちょっと動かして微笑む人がいた。
ほとんど話をする事はなかったが、目が合うと私なりに少し笑って返すだけだった。
今迄彼女はクラスに居た様な居なかった様な、静か過ぎて気がつかなかったのだろう。
彼女自身から存在を主張する言動は一切なかった。
数ヶ月後、彼女の名字が珍しくはないが滅多にないし、日本史の教科書か、何かで見た様な記憶が あった。
今思うと私も大胆と言うか『あなたのおうちは○○藩にゆかりがあるの?』と尋ねたら
『そう』と一言あった。それっきり私は忘れてしまった。