涙(5)
徒歩圏内に公立図書館があった。 戦前出版された古い少年少女向けの本が、結構あったので常時借りていて、退屈する事はなかった。
年に数回、 自分の気持ちを持て余して、どう仕様もなくなると、(今で言えば子どもなりに、ストレスが溜まった状態)、 泣く為に公立図書館に走って行く。
毎回、 飽きもせず『安寿と厨子王』『ああ、無情』『アンクル、トム、キャビン』のいずれか一冊を借りて来た。
更に涙を流している自分に感極まって、 ラストは大泣き(涙でビチョ、ビチョ、、、、)。
涙を流す事は、私にとって浄化作用が働いた様だ。
読み終わったら、気持ちがスッキリ。
この三冊の物語は、いずれもよく効いた。
涙なしでは、読めない本は他にも沢山ある、どれでも良いわけではない。
悲しみ、酷さ、同感、感動、、、、そして絶対欠けてはいけないのは『ロマン』がある事。
私の場合『ロマン』がないと、ストレス解消どころか、タイプの違うストレスを抱えることになる。
内容があまりにも『リアル』だと、悲しくてしばらくの間私の心の中を占めるのがある。
『小島の春』を読んだ時は、特にそうだった。 小学生の私には重すぎた。
ハンセン病について全く知識はなかった。 こんなに悲情で理不尽な話が実際にあるとは、身に
つまされて、正直悲しすぎて暫くおとなしくしていた様に思う。
しかし、この本を読んだ事で、私の知らない世界を垣間(かいま)見た気がした。
その後、私の空想癖はあいかわらず続いていた。
が、読書の傾向は 創作物語に加えて実話物語までひろがった。